「心で喋る」ことを仕事にしたいという気持ちから、やっとオーディションで掴んだ早朝テレビ番組のアシスタント。テレビ局からの帰路、自転車を漕ぐ姿を横目に爽快と駆け抜ける事をうらやましく思っていた。利便性だけではない〝どこへでも行ける〟憧れがあった。放送後は自動車学校へ通い、車の免許を手に入れたのは19歳の冬。駆け出しだった私は姉の車を借りながら、いつしか自分の車を持つことが夢になっていた。

それからやっと手に入れたマイカーは私の相棒になった。北海道内のさまざまな現場へたくさんの衣装や何足もの靴を積んで走った。晴れの日も雨の日も、いつも一緒に過ごしてきた中で、「一人じゃない」という気持ちに救われたこともあった。〝さぁ、行こう〟〝今日も守ってくれてありがとう〟と声をかけながら、名前までつけてしまうほど愛車への思い入れが強い。

30代になってから、〝遊び心と個性があって、どこへでも力強く連れて行ってくれそうな車〟を思い描いていた矢先にRENEGADEに出会った。JEEPの逞しさを醸し出しつつも、丸みを帯びたフォルムに女性らしさも感じる。一目惚れだった。

木の間から漏れるお日様の光やふんわり土から立ちのぼる春の香り。思わず一人でにやけてしまう。あの頃の私に、今の私はどんな風に映っているんだろうなんてふと考えながら、はじまりを感じる春はなんだかいつも背筋がピンとする。そんな大型連休の合間にできた束の間のオフ。行きたいと思っていた小樽に出かけた。