息子が生まれて8カ月。笑ったり、怒ったり、表情も豊かになった。夏はよくバギーを押しながら、近所をあてもなくお散歩に出かけた。その道には、知らなかった景色がたくさんあった。一人だと知らなかったことも、この子のおかげでたくさん見ることができた。そして、念願叶って我が家にFIAT 500Xがやってきた。パパが、来る日も来る日も出かけて行く“お出かけ好き”の私を見かねて、「雪の上でバギーを押すのは危ないでしょ」と、車を買うことになった。実家暮らしの頃から、コンパクトサイズの車に乗っていたから、さすがに大きい車には乗れない気がした。たまたま通りかかったショールームの赤い展示車に一目惚れして試乗してみると、サイズ感や乗り心地もいい感じ。FIAT 500Xは四輪駆動だと知って、これしかないと即決だった。

　結婚する前は北海道を離れ、劇団員として働いていた。さまざまな地域を公演のたびに巡り、毎日が慌ただしく仕事三昧。夢を追いかけ、憧れのミュージカルにも出演が決まり、忙しいながらも充実した日々だった。でも30歳が近くなった頃「私はこの先どんな人生を過ごしていきたいんだろう」と、悶々と考えたこともあった。北海道に残してきた親のことも気になっていた。運良く出会いに恵まれて結婚し、地元である北海道でまた暮らせるようになったのは、自分にとって“ちょっぴり奇跡”かもしれない。

　今年の秋には、絶対行こうと決めていた紅葉狩り。渋滞を回避するためにパパをお見送りしてから、すぐに定山渓へ向かって出発した。今日は二人で紅葉デートだ。息子も片道1時間くらいだと、チャイルドシートに座って大人しくしていてくれる。山々の赤や黄色の紅葉を見ながらハンドルを握っていると、この穏やかな幸福感にじーんとくる。さすがに今日は温泉には泊まれないけれど、車を停めて少しだけ温泉街を歩くだけで、ちょっとした旅行をしている気分になれた。この子にとっての初めての秋は、どんな風に映っているんだろう。北海道の四季折々の素敵な景色や空気に、たくさん触れさせてあげたい。雪が降っても、FIAT 500Xと一緒にどこまでも。

私の新しい暮らしが、この車と共にはじまっている。